Q001
- 暑熱期には、牛のルーメンでどのようなことが起こっているのでしょうか?
- アシドーシスになりやすい状態になっています。
牛の食べた飼料は、ルーメン(第一胃)内の微生物によって利用され、VFA(揮発性低級脂肪酸)が作られます。そのVFAが牛にとって栄養源になっています。しかし暑熱期には粗飼料の食い込みが悪くなり、濃厚飼料を多く食べる(相対的に)ようになります。それに伴い、VFAの中でもプロピオン酸と酪酸が増加しルーメン内のpHが低下します。さらに、乳酸が産出されるとルーメン内のpHはますます低下します。それがいわゆるルーメンアシドーシスです。また、牛は暑熱ストレスを受けると、普段より唾液分泌が減って直接ルーメン内のpH低下を抑えることができなくなります。一旦ルーメンアシドーシスになると、食欲減退・乳量や乳脂肪の低下・軟便などにつながります。また、急性・重症性になると、食欲の廃絶・筋肉の震え・泡状の軟便・脱水による目のくぼみ、さらには死亡することもあります。
暑熱期には牛は私たち人間の想像以上に様々なストレスを受けています。
下記に主な反応と対策を示しました。牛の状態を判断し、的確な対応をすることが大切です。
暑熱ストレスによる牛の反応
- 1.体温の上昇
- − 39.2℃以上
- 2.呼吸数の増加
- − 80回/分以上
- 3.起立時間の増加
- − 体表面を増やして体を冷やす
- 4.選び食い・固め食い
- − ルーメンアシドーシスへ
- 5.反芻・咀嚼回数減少
- − ルーメンアシドーシスの影響
- 6.乾物摂取量の低下
- − 体熱の発生量を減らすため
- 7.乳量・乳質の低下
- − 乾物摂取量が落ちるため
- 8.唾液の分泌の減少
- − 唾液中に重曹の供給も減る
暑熱対策
- 1.飲水環境の整備
- − 水圧・水量のチェック、水槽の設置・掃除など
- 2.送風・換気を行う
- − 体熱の放散量を高めて、その熱を舎外に出す効果
- 3.日陰の用意
- − 体温の上昇を抑える
- 4.良質粗飼料の給与
- − 品質が悪いと体内の熱を発生させ、採食量も落ちる
- 5.高消化繊維の給与
- − ビートパルプなど。熱の発生を抑える
- 6.給与回数を増やす
- − ルーメンアシドーシスの予防・採食量のアップ
- 7.バッファーの給与
- − 重曹、酸化マグネシウム、またはその他ルーメンpH緩衝剤
暑熱対策としては現状に合わせてさまざまな方法がありますが、環境改善と飼料プログラム改善の両方を行うことが効果的です。また、暑熱ストレスとルーメンアシドーシスは結びついています。これらが繁殖の悪化にもつながるので、いかに対策を取るかが大切です。