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【図1】GABA(ギャバ)の効果について
牛が神経質になって落ち着かない場合、立っている割合が多くなることがあり、その原因としてルーメン発酵が安定していないことがまず考えられます。通常、牛はバランスの取れた飼料を適切に摂取することで、ルーメン内のpHが安定し、ルーメン内の細菌や原虫がバランス良く増殖します。ルーメン内に生息する原虫の一つであるプロトゾアには、爆発的な発酵やルーメンアシドーシスを防ぐ役割を持っているのですが、ピペコリン酸という物質を生成する働きも持っています。このピペコリン酸は脳の安定化に関与するGABA(ギャバ)の分泌を促進させることが知られており、牛がリラックスした状態を保つのに関係していると言われています(図1)。
その他、牛の起こしたい行動と実際の行動が繋がっていない可能性があります。そしてルーメン発酵が安定させることができれば、結果として牛が寝る時間が増えることが期待できる上、反芻する牛の割合も高まります。
カビ毒を摂取した場合にも、毒素によって自律神経を失調し、牛が落ち着かず立っていることがあります。そのような場合には、なるべくカビを除くのはもちろんのこと、カビ毒対応の添加剤を給与することをオススメします。
ストール構造の問題とも関連しますが、蹄病も大きな原因になります。一度寝ると起き上がることができなくなるため、立ったままの時間が増え、結果として蹄に負担がかかって悪循環となってしまうのです。蹄病にはさまざまな原因が考えられると思いますが、それに応じた対策が必要です。飼料メニューの見直しや、蹄をできるだけ清潔に保つ処置などを検討すると良いでしょう。
牛が暑熱を感じる時には、体表面積を増やすために立っていることが多くなります。また風が当たるところや水槽の周りに涼を求めて集まることが多くなるほか、夏〜秋に刺しバエが増えた時も密集することが多くなります。
牛は寝ることによって反芻咀嚼が促されます。また寝ている間に牛乳が作られるので生産性にも大きな影響が及ぼします。そのため、立っている牛が多いと気づいた場合には、その原因を探り、対処することが大切です。特に粗飼料の不足や濃厚飼料の選び食い、固め食いによるルーメンpHの低下には注意が必要です。そういった対処を行うことが牛の健康と牧場の生産性を維持することに繋がります。