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夏の暑い時期、牛の体は熱を外に放散しようとして血液が内蔵に運ばれにくくなり、採食量が減ってしまいます。そのためエネルギーは不足しますが、牛は頑張って乳を出そうとし、体に無理がかかってしまいます。秋に入って涼しくなってくると、代謝は活発になりエネルギーの要求量は増えていきますが、採食量の低下で一度減ってしまった血液量は、戻るのに時間がかかります。そのため、思うように食欲は伸びず、夏の疲労に加えて季節の変わり目による不安定な気候が加わって事故が増えてきます。「夏バテ」と聞くと夏の間に起こるとイメージしがちですが、牛にとっての夏バテは秋に起こることが多いのです。
体の対応がスムーズに行かない場合、分娩時に低カルシウムなどが起こりやすくなります。秋は分娩時だけではなく、分娩後10日くらいまでは漏乳や搾乳後すぐにベッドで寝る牛などを観察し、サインが見られた場合、手遅れにならないようにこまめにカルシウムを給与しましょう。
また、秋は気温が下がってきますが、特に9月は湿度が高い状態が続きますので、牛床環境が悪くなります。免疫力も低下しているため、乳房炎が発生しやすくなりますので、特に牛床管理は重要になります。
夏に頑張った体を休ませてあげるため、栄養と休息をしっかりと与えることが重要です。採食量が増えないからといって単に濃厚飼料を増給するとアシドーシスになりますので、消化性の良い繊維、良質なタンパク質の給与、ビタミンを増給して、牛の状態や牛床環境を整えてあげることをおすすめします。秋の不調を事前に防ぐには、夏の間に塩やカルシウムなどのミネラルをしっかり給与し、ルーメンの発酵状態を良く保つ事が大切です。